【宮崎県警パワハラ疑いの本質的問題】組織の常識は世間の非常識という批判的思考が重要である 2021 6/20 パワハラ対策 パワハラ 人材育成 叱る研修 2021年6月20日 目次何が問題なのか? ニュースでパワハラの疑いがあると記述されているとおり、問題はパワハラに該当するからです。 職場のパワハラについて、厚生労働省が定義をしています。 ✅厚生労働省によるパワーハラスメントの定義 ①優越的な関係を背景とした言動であって ②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより ③労働者の就業環境が害されるものであり 上記の①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。 さらに、職場のパワハラを6タイプに分けて説明しています。 ✅厚生労働省による職場のパワハラ6類型 ①身体的な攻撃 ②精神的な攻撃 ③人間関係からの切り離し ④過大な要求 ⑤過小な要求 ⑥個の侵害 今回、宮崎県警で起きたパワハラは、職場の飲み会の席で、当時警察署の副署長が部下の手のひらをタバコの灰皿代わりにしたということで、①に相当すると思われます。 本当の問題点は何なのか? 筆者の河村晴美は、2020年に奈良県警察本部にて、パワハラ対策の動画研修にて講師を務めさせていただきました。 今回の件に限らず、上司が役職と役割のちがいがわかっていないために、部下を私物化しているのは、あまりにも思慮がなさすぎます。 役職のある人が自分に甘いという傲慢さは問題です。 ただし、組織のヒエラルキーという仕組み自体がいけないのではありません。 個人プレーではなく、集団で動くことが有効である場合は、組織を構成することは有意義です。 組織力を発揮して問題解決に当たるには、上意下達はとてもメリットがあるのです。 では、なぜ今回このようなパワハラ問題が起きたのでしょうか? 組織という仕組みが悪いのではありません。 組織に所属する人、特に部下の能力発揮をさせる立場にある人が、自分の役割を勘違いしていることに問題の元凶があったのです。 部下をモノ扱いするから、灰皿として扱ったのです。 部下は、部下である前に、人格を有する人間です。 一人の人間として、存在を尊重し、尊厳を重んじる心があれば、こんなことはしないはずです。 ピラミッド型の組織構造に問題があるのではない 部下の尊厳を重んじないからパワハラになる 組織にはびこる常識を疑え 筆者の河村晴美は、これまでに県警本部、陸上自衛隊、京都消防本部などでパワハラ研修、部下のやる気を引き出す叱り方などについての講演をさせていただきました。 多くの場合、リクエストの内容は「うちの業界が普通では無いことを、民間企業での多くの実績を踏まえて教えてほしい」と言われます。 自分たちの常識は、世間の非常識 特に、警察官系の場合、尋問では被疑者を疑いの目で見て、証言を冷静に吟味するのが仕事です。 そうやって批判的に見ているのに、自分のことになったとたん、批判精神は甘くなるのです。 他者には批判的視点で見るのに、自分にはその眼差しを向けない。 自分は批判的視点を持っているし、できているという自己矛盾に気づいていないのです。 批判的視点こそが思考力を磨く 批判的思考は、真実に近づく大切な思考です。 西洋の近代哲学の礎を築いた、ヘーゲルの弁証法の思考法を説明します。 ✅ヘーゲルによる弁証法 テーゼ(正):常識、固定概念、先入観 アンチテーゼ(反):逆説、反対意見、反対の立場 ジンテーゼ(合):第三の解決策 正しいと思われていることについて、矛盾することや反対意見を立て「それって本当?」と疑問のまなざしで、正しいと言われていることを揺さぶってみる。 すると、正しいと言われていることの根本にあるのは、多くの人の偏見や過半数の意見や誰かにとって都合が良いということに気づいたりします。 その本質に気づけたら、次は「ではどうしたら良いか?」思考を昇華します。 これをアウフヘーベン(止揚,揚棄)と言います。 アウフヘーベンとは、テーゼとアンチテーゼを議論の土俵に上げて、妥協ではなく、ゼロベースで考えて最適解を導き出すことです。 そうして出てきた最適解、第三案をジンテーゼと言います。 人を疑うまなざしを、自分に活用せよ 研究者は常に実験する際に、批判的思考で実験しています。 というのも、先行研究とは異なる何かを発見するのが、自分の専門領域の存在価値だからです。 ノーベル賞を受賞された、本庶佑先生が仰っていました。 「自分を疑え」 自分を疑うメリット 自分を疑うというのは、これまでの自分の当たり前、ルーティン、自動反応に、疑問のくさびを打ち込むことです。 ✅自動反応にくさびを打つこむ質問 ・これって本当か? ・なぜ、これを信じているのか? ・正しいと思う根拠は何か? ・なぜ、正しくないと言えるのか? ・なぜ、そう言えるのか? 自分を疑うことで、見えない偏見、思考のかたよりに気づくことができます。 そして、アンコンシャスバイアス(見えない偏見)を解消することもできるのです。 自分の固定概念に気づくと、部下を活かす方法の選択肢も広がるのです。 例えば、部下について固定概念を解体してみましょう。 (今まで) 部下は指示し命令して動く存在 (思考解体) 本当にそうなのか? 部下の意志を確認したことはあったか? 部下の思考を引き出したら、もっとうまくいくのではないか? すると、もしかしたら、こうなる可能性も高まるのではないでしょうか。 (これから) 部下に仮説を立てる思考力を身につけさせることで、指示命令の本質をとらえる人材へと成長促進させる 自分を疑うことは、思考を封鎖させるのではなく、思考を展開させることができるのです。 パワハラ問題を今後に活かす 組織として一番おろかな対応策は、単なる対処療法です。 例えば、今回の件で「部下の手のひらを灰皿がわりにすることはやめましょう」 具体的な行動規制は、応用が聞きません。 無数の行動規制を列挙するのは、キリがありませんし無駄です。 大事なことは、本質をえぐり出すことです。 今回の問題の元凶は、思考停止です。 業界の常識は、思考停止がもたらした悪害です。 いつものルーティーン、自動反射運動に疑問のくさびを打つのが、批判的思考です。 業界の不文律に、理性の吟味のまなざしをもちましょう。 これらを組織全体で取り組まない限り、職場のパワハラ問題はなくなりません。 今回のパワハラ問題である、部下の手のひらを灰皿がわりにする行為は、さすがに多くの人にとっては当たり前には映らないことでしょう。 しかし、誰もが自分の心に巣食っている常識や固定概念が、もしかしたら他者を尊重していないかもしれない・・・と立ち止まって考えてみることが大切なのです。 自分を疑うことで、大きな気づきが得られる 『叱るとは、高抽象の気づかいである』 叱りの達人協会 パワハラ対策専門家 叱りの達人 河村晴美]]>