【4割が見逃す】部下の離職・休職を予兆できない構造的理由3選と解決策

4割の上司が見逃す、部下の離職・休職の予兆の構造的理由と解決策について、それぞれ3つを人材育成の専門家であり、叱りの達人河村晴美氏による解説ブログです。

あなたは部下の突然の離職や休職に直面し、「なぜ、もっと早く気づけなかったのか」と後悔したことはありませんか?

人事コンサルティング会社の調査によると、部下の離職・休職を経験した管理職の4割以上が、「予兆を把握できていなかった」と回答しています。これは、優秀な管理職であっても、構造的な問題によって部下の心のSOSを見逃している、という厳しい現実を示しています。

部下の離職・休職の予兆、4割以上の管理職が把握できず。最大の要因は「自身の業務過多」だった。〜「現代の管理職が抱えるチームマネジメント課題の実態調査レポート」を公開〜

業務の負荷やプレッシャーが増す現代において、部下の心身の健康は組織の持続的成長に直結する最重要課題です。
この予兆を見逃し続けることは、マネジメント不全を引き起こし、最終的には優秀な人材の流出や組織全体のパフォーマンス低下を招きます。

本記事では、叱りの達人であり人材育成の専門家より、なぜ上司は部下の離職・休職の予兆に気づけないのか、構造的理由3選を深く掘り下げます。

そして、その構造的な壁を打ち破るための、部下との関わり方と解決策3つを提示します。
この記事を読むことで、あなたは部下との信頼関係を深め、予兆のシグナルを的確にキャッチできる強いマネジメントスキルを身につけることができるでしょう。

目次

なぜ上司は部下の離職・休職に気づけないのか?構造的理由3選

構造的理由1:【心理的安全性不足】部下が本音を語れない環境

最も深刻な構造的理由の一つは、チーム内の心理的安全性の欠如です。

上司への遠慮や評価への恐れ
部下は、「上司に心配をかけたくない」「弱音を吐くと評価が下がるのではないか」といった恐れから、業務の困難さや精神的な疲弊といった本当の悩みを打ち明けられません。

問題放置のデメリット

叱る側(上司)が、「ダメなところを指摘する人」という役割に偏重しすぎると、部下は本音を隠すようになります。
ネガティブな兆候は、上司に見せないことが最適戦略となってしまうのです。

この心理的壁が、早期のシグナル(予兆)を遮断する、見えない巨大な壁として立ちはだかります。

構造的理由2:【時間と意識の制約】「忙しい上司」という名の壁

多くの管理職は、プレイングマネージャーとして自身の業務と部下のマネジメントを兼任しており、時間的・精神的な余裕がありません。

マネジメントの優先度低下
緊急性の高い業務や対外的な会議に時間を割かれ、部下との一対一の非公式な対話観察の時間が削られがちです。

「結果」への過度な焦点
目に見える成果や進捗に意識が集中し、部下の情緒的・精神的な変化という、目に見えにくい予兆を捉えるアンテナが鈍くなります。

問題放置のデメリット

このようなマネジメント不全が続くと、優秀な層から順に「この組織では正当な評価やサポートが得られない」と感じて流出します。
また、残されたメンバーのパフォーマンスが低下し、組織の持続的成長が阻害されます。

構造的理由3:【属人化された評価基準】マネジメントスキルと経験のバラつき

マネジメントスキルが属人化し、組織として一貫した部下への関わり方が確立されていないことも大きな要因です。

問題放置のデメリット

経験と感覚に依存:
部下の状態把握や予兆の判断が、上司個人の「察する力」や「過去の経験」といった主観的な感覚に大きく依存してしまいます。

客観的な指標の欠如:
離職・休職リスクを早期に発見するための客観的な行動指標(例:メールの返信速度、残業時間の変化だけでなく、会議での発言回数や表情の変化など)を組織全体で共有・訓練できていないために、いくら個人の能力が高くても、共有がなされないことで、商機やチャンス、タイミングを逸する懸念があります。


上司は部下とどう関わるべきか?解決策3選

構造的な壁を打ち破り、部下の予兆を的確に察知するためには、関わり方の質と構造そのものを変える必要があります。叱りの達人として、人材育成の専門家として、以下の3つの解決策をご提示します。

解決策1:【聴き方改革】「事実と感情」を分離した対話の導入

上司は、部下を「業務を遂行する人」としてだけでなく、「感情を持った一人の人間」として理解する姿勢を持つべきです。

  • 目的: 心理的安全性を高め、部下の「感情・本音」を引き出す

  • 実践法:「事実の確認」「感情の傾聴」の時間を明確に分ける
    • 事実の確認: 「タスクAの進捗はどうなっている?」
    • 感情の傾聴: 「最近、何か困っていることはある?」「その困り事に対して、今どんな気持ちでいる?」と、業務から一歩離れた場所で、部下の感情に焦点を当てた問いかけを定期的に行います。

  • 叱りの視点: 「叱る」とは、部下の成長のためにフィードバックを届ける行為です。感情を傾聴した後で初めて、具体的な事実に基づいた建設的なフィードバック(叱り)が活きてきます。

解決策2:【予兆のチェックリスト化】客観的な「変化」を捉える仕組みの構築

予兆を個人の感覚に頼るのではなく、組織全体で共有可能な客観的な指標として扱います。

  • 目的: 予兆の発見を「スキル」から「システム」へ昇華させる

  • 実践法: 部下の行動や態度の「変化率」に着目したチェックリストを導入します
    • 例:以前は積極的に発言していた会議で発言がゼロになった、服装や身だしなみが以前よりも乱れがちになった、報告・連絡・相談の頻度が落ちた、など

  • 運用策: 1on1ミーティング時だけでなく、日常の業務観察の中でこの変化を記録・共有し、上司間の情報交換を通じて多角的に確認します

解決策3:【週に一度の「雑談10分」】非公式な対話機会の構造化

非公式な関わりこそが、部下の小さな変化を捉える最大のチャンスです。これをルーティンとして構造化します。

  • 目的: 業務のプレッシャーがない状況で、上司と部下が人としてつながる接点を作る

  • 実践法: 「週に一度、業務と関係ない雑談を10分間行う」ことをマネジメントの必須タスクとします。テーマは週末の過ごし方、趣味、最近関心のあるニュースなど、何でも構いません

  • 効果: この「雑談」の中で、部下は安心感を覚え、ふとした瞬間に本音や悩みを漏らす可能性が高まります。また、上司も部下の「普段の状態」を把握できるため、「変化」に気づきやすくなります

この関わりがもたらす未来

上記3つの解決策を実施することで、組織には以下の未来が訪れます。

1.早期対応による離職・休職の抑制

部下の小さなSOSを早期にキャッチし、深刻化する前に適切なサポート(傾聴、業務調整、専門家への相談推奨などを行えるようになります。

2.マネジメントの質の向上

部下との信頼関係が深まり、上司のリーダーシップが強化されます。マネジメント不全が解消され、優秀な人材の定着率が向上し、組織全体のパフォーマンスが安定します。

3.持続的成長の土台構築

離職・休職による採用コストや教育コストが無駄にならず、チーム全体が安心して挑戦できる「心理的資本の高い組織」となり、持続的な成長を続ける強固な土台が築かれます。

まとめ

離職・休職の予兆は、部下からの「組織を変えるチャンス」という名のシグナルです。
構造的な壁を打ち破り、部下との関わり方を見直し、誰もが安心して働ける強い組織を共に目指しましょう。

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