パワハラ臭?1on1面談が『取調べ尋問調査』上司の特徴5選

本コラムは、1on1面談が『取調べ面談』になっている特徴5選について、叱りの達人協会の代表 河村晴美氏による解説です。 最近の企業では、人的資本による経営や社員のエンゲージメントを高める目的のもとに、1on1面談に力を入れている企業が増えています。しかし、残念なことに、せっかく時間と労力を費やして1on1面談を行っているにもかかわらず、現実は真逆の悪影響が出てしまっている組織も存在します。というのは、部下やメンバーのやる気や会社への帰属意欲が低下してしまっているケースも散見されるのです。 このような1on1面談について共通する特徴があります。それが、まるで刑事ドラマのような「取調べ尋問」スタイルなのです。 1on1面談が『取調べ面談』になっている特徴5選 ①事実確認しかしない ②「お前がやったんだろ!」先入観で決めつける ③犯人探し ④威圧・恫喝・言葉責め ⑤マウント取り 詳しくは、本コラムに解説されています。 さて、河村晴美氏は、経営者の悩みを受け止め、社員と社長と信頼を繋ぐ組織強化、人材育成を指導しています。パワハラ問題など社会の課題の課題解決に向けて、さらに活動を広げている。パワハラの解説、部下育成や職場コミュニケーションの講演研修コンサルティングの情報は、叱りの達人協会公式サイトをご覧ください。https://shikarinotatsujin.com/

(なぜ、やる気が吸い取られてしまうだろう?)

最初は自信がなかったのに、どんどん意欲が湧いていきて、勇気をくれるリーダーがいる。
一方で、意欲もエネルギーも溶けて無くなり、挙げ句の果てに不愉快を固形化させる上司もいる。

たかが一言。されど一言。

特に、上司が部下メンバーへ投げかける一言は、組織全体の生産性や覇気まで、全体の潮目まで変えてしまうかもしれない。それほど、人間関係とは繊細なものなのです。

人の心は日々コロコロと変わるものです。だからこそ、気分のアップダウンに左右されることなく、モチベーションを高く維持してもらいたい。経営者や管理職はそう願っています。

そこで、多くの組織では、人事考課面談とは別に、上司による部下とのマンツーマン面談(1on1ミーティング)が行われています。

1on1面談は、所用時間や環境など、特に決まり事はありません。
形にこだわるよりも、むしろ、何のために行うのか?という目的が大事です。この目的について、経営者や人事統括者だけではく、実際に面談を行う上司と部下メンバーの双方が、面談の目的を理解し共有していること。

目的共有が、1on1面談の質を左右するのです。

1on1面談の質を決めるのは、目的共有ができているかどうか
「仏作って魂入れず」になってはいけない

目次

1on1面談の目的は、たった1つ

1on1面談を行う目的とは何でしょうか?

それは、組織の成長ヴィジョンと個人のキャリアヴィジョンを一体化させることです。

1on1面談の目的とは、目的の共有/目標の合意

しかし、現実は残念なことに、1on1面談を実施することで、部下の心がどんどん上司から離れてしまっている場合があります。

なぜ、気持ちが離れてしまうのでしょうか?

その原因は、上司が1on1面談の効果的なやり方を知らないために、我流で行ってしまい、失敗しているのです。

なぜ、あの上司は部下メンバーの意欲を下げてしまうのか?

「なんか、この人とは話しにくいなあ」
「この人には、本音も夢もやりたいことも話したくない」

こんな人、いますよね?

一方で、どんどん心を開いて、自分のことを話してしまう人がいます。

「実は、こんなことを考えていたんです」
「本当は、こうしたほうがいいって考えていることがあるんです」

このように、同じ人間なのに、面談者によってアイデアが出てくる一方で、アイデアが全くわかない思考停止に陥ってしまう場合があります。

せっかくやる気に満ちていたのに、意欲がどんどんしぼんでしまう…


とてももったいないことですよね。実は、この問題は部下メンバー当人だけの話ではありません。
組織全体の損失なのです。

というのも、もしかしたら部下メンバーが能力発揮したことで会社全体として得られる利益なのに、機会損失してしまった、利益を取り逃してしまったからです。

これは、経営的視点から見ても、問題の見逃しとはすなわち機会損失を放置だということです。
経営者であれば、直ちに何らかの策を講じるべき問題です。

1on1面談が『取調べ尋問』になっている特徴5選

経営者は、機会損失したくないと考えている。
社長は、社員という人的資本を有効に活用したいと考えている。

なのに、人的資本である部下メンバーの意欲をしぼませて、能力発揮を阻む上司がいます。

この上司の特徴は、1on1面談が『取調べ』モードになっています。

1on1面談が『取調べ尋問』になっている特徴5選
①事実確認しかしない
②「お前がやったんだろ!」先入観で決めつける
③犯人探し
④威圧・恫喝・言葉責め
⑤マウント取り

それでは、1つ1つ一緒に見ていきましょう。

取調べ尋問:①事実確認しかしない

指示命令したことが

・やったのか?or やっていないのか?
・できたのか?or できていないのか?

どっちなんだい?

なかやまきんに君は、多くの人に認知されて人気者ですが、それは芸人として道を極めており、何よりも人を幸せにする笑いに昇華させているからです。

同じセリフなのに、雲泥の差ですよね。事実確認の質問は、上司の仕事である、部下の行動マネジメント放棄です。

事実確認の質問の本質は、行動のマネジメントをしておらず、進捗、経過、結果の報告の催促にすぎないということです。

取調べ尋問:②先入観で決めつける

「お前は本当にグズだな」など、一度や二度のミスや失敗について、(いつもそうだ)と過度に一般化することはありませんか?

(この人は〜人である)と、タイプや行動傾向を特定化して、例外を排除する考え方を、確証バイアスと言います。

確証バイアスとは
人の思考や行動に偏りが生じることならびにその要因

英語の「bias」を日本語に取り入れた言葉で、偏りや斜めといった意味があります。
ネガティブな先入観で人を判断すると、相手の良い点を見逃してしまうデメリットがあります。

部下メンバーの強みや長所を見逃してしまうと、事業発展に活かすチャンスを取り逃がしてしまいかねません。
これは経営における機会損失です。これは、経営に反するマネジメントの失点となってしまうのです。

取調べ尋問:③犯人探し

刑事:お前がやったんだろ!
犯人:申し訳ありません。私がやりました…

刑事ドラマでは定番のシーンであり、見どころかもしれません。しかし、職場で実際に行われているとしたら、しかも犯人役を部下メンバーが担うとしたら、たまったものではありませんよね。

窮鼠(きゅうそ)ほぞを噛む

というように、追い詰められると、捨て身の覚悟で反撃してきます。

職場で、上司が部下メンバーを過剰に追い込んでしまうと、指示待ち・思考停止・仕事放棄(サボる)・会社への嫌がらせ(迷惑行為・誹謗中傷など)・突然退職・SNS書き込み など、会社や上司が困ることをやってしまいかねません。

取調べ尋問:④威圧・恫喝・言葉責め

威圧・恫喝・言葉責めとは、【職場でのいじめ・嫌がらせ】に相当します。
厚生労働省からも、パワハラについて定義が明確に言語化されています。

ぜひ、1on1面談を『取調べ尋問』ではなく『成果を生み出す創造的面談』に変えていきましょう、

人は「何を言っても無駄だ…」こう感じると、何もしないという抵抗力を発揮します。指示待ち、思考停止、無言…など、上司の指示命令への 静かな反抗 です。

指示待ち人間を作ってしまう要因は、本人ではなく上司や職場環境と捉え直すと、人材育成の機会を創らないことは、人的資源を活用していないという問題の捉え直しができますね。

取調べ尋問:⑤マウント取り

実は、パワハラの本質は、上司が部下に対する『マウント取り』だったりします。

「どうだ!オレ様の方がお前よりもえらいんだ!』
という感じで、偉くて、立場が上であることを見せつけたいがために自己主張することです。

しかし、なぜこれをやってしまうのか?真の原因は2つあります。

マウントを取る真の原因
①自分に自信がない
①自分に自信がない

実は誰からも承認してくれないために、自分で自分を「私はスゴイんだぞ!」と自己追認するしかなくて、無理やり賛同者を募っているのが、年下の部下やメンバーということです。

悪気があって『取調べ尋問』している上司はいない

1on1面談『取調べ尋問』特徴5選について、一緒に見てきました。いかがでしたでしょうか?

少々辛口すぎたかもしれませんが、お伝えしたいことは、経営において人はコストではなく、大事な資産であるということです。本気で経営を考えるならば、人的資本を活用しよう

経営において、至極真っ当な考え方ですよね。企業は人なり、経営の神様と言われる、松下幸之助先生や稲盛和夫先生など、偉大な経営者は、この哲学で世界的企業を創り上げました。

気づいた時が成長の分かれ道です。
今まで、1on1面談で、うっかり『取調べ尋問』していたならば、気づいて別のやり方をやってみませんか?

『取調べ尋問』を脱出して、尊厳を高め合う1on1面談の心得3ヶ条

『部下メンバーを伸ばす面談』心得3ヶ条
①目的共有/目標合意
②尊厳の高め合い
③上質な問いかけ

それでは、部下メンバーを『伸ばし活かす面談』心得3ヶ条について、1つ1つ一緒にみていきましょう・

①目的共有/目標合意

1on1面談は、雑談ではありません。その違いは、目的のちがいです。


雑談について、良し悪しのレッテル貼りや、必要?不必要?論争は不毛です。
雑談とは、相手を知り、親しくなるための会話です。

よって、相手と親しくなりたいと思えば、大いに雑談を行えば良いのです。一方で、ビジネスにおいて、情報共有や意見交換などの価値を創り出す場合は、雑談と異なる目的が必要です。

それが、目的共有/目標合意です。

よって、1on1面談を実のある充実した時間にするためには、上司と部下メンバー双方で以下を共有することが重要なのです。

■目的共有
・何のために、1on1面談を行うのか?
・1on1面談で導き出すゴールは何か?

■目標合意
・上司が、部下メンバーへ目標を押し付けるのではない
上司と部下メンバーが、お互いに目標に向かって走ることにYESを出す

②尊厳の高め合い

上っ面でほめたり讃えたりしても、相手の心には響来ません。
なぜならば、相手へ伝えているように見えますが、実のところ(相手から嫌われたくない)自己保身だからです。

ひるがえって、どんなに厳しくても、苦言を呈しても、相手に響く言葉があります。それは(嫌われても相手の成長に貢献する)覚悟で伝えた時は、相手も拒絶することはありません。

すぐには理解できなかったり、納得できかねたとしても、相手は葛藤しながらも、その言葉を反芻します。時間はかかるかもしれませんが、後になって(こういうことだったのか…)とストンと肚落ちすることがあります。

いつか分かってくれるはずと、未来の相手に託して苦言を呈することは、相手の尊厳へのアプローチです。

「パワハラだ!」と言われないためには、まず自分自身の尊厳を高めるための精神性や倫理観、揺るぎない信念を磨く必要があります。

③上質な問いかけ

問いかけには、2種類あります。相手を挫けさせる問いかけと、相手を伸ばす問いかけです。

例えば、上司が指示命令したのに、部下メンバーができなかった場合

■相手を挫けさせる問いかけ
 どうして君はできないんだ!

【解説】これは、相手の能力不足(ヒト)に焦点を当てています。

■相手を伸ばす問いかけ①
何が、君をできない結果に至らせたと思う?

【解説】これは、できなかった要因(コト)に焦点を当てています

■相手を伸ばす問いかけ②
今回のケーテススタディを通じて、学んだことは何?

【解説】ミスや失敗を転換させる視点を提供し、学びへ昇華させています

■相手を伸ばす問いかけ③
次は達成させるために、君がするべきことは何?

【解説】未来の成功を引き寄せるために、本人の行動を言語化させるアプローチです

指示待ち人間は、本人以外によって作られる

指示待ち人間とは、生まれつきではありません。また、本人の意思によるものでもありません。はからずも、職場の環境や育成する上司の関わりによって、生み出される症状なのです。つまり、症状なので、改善すれば元通り、意欲に満ちた人財に戻るのです。

上司は、知らないうちに『取調べ面談』になってしまっている

「言ったことができてないじゃないか!」

責任感の強い上司ほど、部下メンバーへ言い訳を許しません。この考え方は、目標を達成させるためにとても重要です。妥協が許されるようならば、組織は崩壊し、会社は倒産に向かうかもしれません。

しかし、上司の役割は、数字の管理ではありません。数字を上げるために、部下メンバーの行動管理を行うことが、本来のマネジメントなのです。

マネジメントとは、数字の管理ではない
マネジメントとは、数字を生み出す行動の管理である

なぜ、部下メンバーは目標達成できていないのか?

上司の仕事は、目標への歩みを阻んでいる事や物を見つけて、排除することです。
上司の仕事は、部下メンバーが、サクサク進めるように、どんどん成長するように、余計な重りを下ろして上げることです。

部下メンバーを軽やかにさせていますか?それとも、気重にさせていませんか?

この機会に、1on1面談の固定的スタイルを解体し、1on1面談の目的を再構築してみるのはいかがでしょうか?

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次