建設・製造・運輸業のための“命”を守る最強の指導術~「怒り」を「安全資産」に変える叱り方革命3つの戦略~ 2025 10/23 コラム 叱り方 2025年10月23日 目次建設・製造・運輸業の経営者・管理職の方へ。「怒り」を「安全」に変える3つの戦略 近年、現場の安全意識が高まる一方で、部下への指導に悩む管理職やベテランの方が増えています 。 「厳しく指導したらパワハラになるのでは?」「昔ながらの指導が通じない」といった不安から、部下育成の愛があっても、つい感情的な「怒り」が先行してしまいがちです 。 しかし、その「怒り」が、実は現場の安全を脅かす最大のヒューマンエラーを引き起こしているとしたら、どうでしょうか? 「叱りの達人」として、トヨタ自動車をはじめとする数多くの製造・建設・運輸系の企業様で部下指導の講演を行ってきた河村晴美が、長年の実績と最新のハラスメント対策の知見に基づき、昭和の「根性論」を、部下の自律的な安全行動を促す「安全資産」に変える、具体的な「叱り方革命」をお伝えします 。 1. なぜ、あなたの「愛ある指導」はパワハラと受け取られるのか? 今まで26年間&12万人以上の方へ人材育成をお伝えして感じていることがあります。なぜ、パワハラ問題が起きてしまうのか?あくまでも私見ですが、あえて断定させていただきますと、すべてのパワハラ問題は、善意の主観です。 すべてのパワハラ問題は、善意の主観である どういうことかといいますと、パワハラしてしまった人は故意に相手を傷つけようとしたのではないと言います。「相手の成長のために」「良かれと思って…」「相手とは信頼関係ができていると思っていた」とおっしゃいます。けれども、された側としては、(心を傷つけられた)(侮辱された)(そんな言い方しなくても…)と感じてしまっているんですよね。これって、ほんとに悲しいことだと思いませんか?なぜ、このような誤解が生じてしまうのでしょうか?それは、部下を想う気持ちがあるのに、指導が「パワハラ」や「人格否定」と受け取られるのは、「怒る」と「叱る」の根本的な違いを理解していないからです 。 怒りは「本能」だが、叱るは「戦略」 「怒る」は本能です 。感情の爆発であり、その背景には、実は部下への「期待」「信頼」「愛情」といったポジティブな感情が深層に隠れています 。この期待や愛情が裏切られたと感じたときに、不安や驚きを経て「怒り」となって表層に噴き出すのです 。 一方、「叱る」は戦略です 。その最終目的は、部下を「伸ばす」ことにあります 。 感情に任せて怒鳴っても、部下は委縮し、指示待ちや他責思考に陥ります 。結果、重大な事故につながるヒューマンエラーの温床となりかねません。 感情的な「怒り」を避け、戦略的に「叱る」ための第一歩が、怒りの感情が湧いたときに「なぜ私は今、腹が立っているのか?」と、深層にある「期待・愛情」を見つめ直すことです 。これが、怒り感情をコントロールするための「6秒ルール」の本質にも繋がります 。 2. 「無礼な態度」は経営資源の最大活用を阻む「利益相反」である パワハラ防止対策関連法(改正労働施策総合推進法)が施行され、企業にはパワハラ対策が義務づけられています 。パワハラを「嫌がらせ」として片付けてはいけません 。 パワハラは「生産性ゼロ」を招く パワーハラスメントとは、「(1) 優越的な関係を背景に」「(2) 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により」「(3) 就業環境を害する」という厚生労働省による3つの要件を満たす行為です 。これは、単なる倫理問題ではなく、経営資源の最大活用を「阻んで」いる行為なのです 。 特に現場における「ダメ出し」や「見下し」といった「無礼(ディス・リスペクト)」な態度は、部下に以下のような深刻な弊害をもたらすことが、研究で明らかになっています 。 仕事にかける労力を意図的に減らす(48%) 仕事の質を意図的に下げる(38%) 自主自立行動やチームへの貢献行動が減る 部下が意図的に安全意識を下げたり、危険予知の報告を怠ったりする——これこそが、命に関わる事故を招く「生産性ゼロ」「利益相反」の状態です 。 だからこそ、指導においては、まず部下への「ねぎらい」「感謝」「リスペクト」を伝えることが、現場の心理的安全性を確保し、結果的に安全行動を促すための「体」(態度)となります 。 3. 部下の「貢献欲求」を引き出す!「なぜ?」を「どうすれば?」に変える技術 では、具体的にパワハラにならない「うまい叱り方」の技術、すなわち「技」はどうすればいいのでしょうか? 特に、何度も同じミスを繰り返す部下への指導には、以下の原則が不可欠です 。 NGな「なぜ?」をOKな問いかけに 部下の失敗に対し、「なぜ失敗したんだ?」「なぜ事前チェックしなかったんだ?」と詰める「なぜ?」の問いかけは、部下を責める・とがめる・否定する行為となり、パワハラのリスクを高めます 。 代わりに、以下の「OK構文」で部下を成長に導きましょう 。 NGな問いかけ(責める)OKな問いかけ(成長を促す)なぜ、失敗したんだ?!どういう意図で行ったの?なぜ、こんな状況になったんだ!現状に至った経緯を教えてくれる?何回言わせればできるようになれるんだ!どこまで理解してる? 「事実と解釈を分ける」技術を使うことが大切です。まずは、上司自身がネガティブ感情で部下メンバーに接するのではなく、事実に焦点を当てて対話しましょう。大切なことは、相手を責めたり、詰めたりするのではなく、部下メンバーの自律的な成長を促すことが重要ですね。 「ほめられたい」よりも「役に立ちたい」 若手・中堅層の部下が本当に求めているのは、「ほめられたい」という自己承認欲求ではなく、「チームや会社に役に立ちたい」という貢献欲求です 。 上司が「お前はダメだ」と人格否定するのではなく 、ポジティブな言葉で「改善の余地がある」「君の尊い能力を出し惜しみするのはもったいない」と語りかけ 、貢献意欲を刺激することが、彼らを自主的な安全行動へと突き動かします。 最終的に「うまい叱り方」は、以下の3ステップで完了します 。 Step 1:感謝&ねぎらいを伝える(ポジティブ) Step 2:状況確認&改善行動を共有する(ネガティブな事実を扱う) Step 3:前向きな声かけで送り出す(ポジティブ) 上司の一声が変わることで、部下のパフォーマンスは必ず変わります 。 まとめ:安全は「叱り方革命」から生まれる 「叱る」とは、上司と部下が互いに成長しあう「磨き合い」の関係を築くための、極めて高度で戦略的な指導術です 。 昭和の『背中を見て学べ』の根性論から脱却し 、「パワハラ予防=経営資源の最大活用=現場の安全確保」という戦略的な指導に転換することこそ、建設・製造・運輸業界の未来を切り開く「叱り方革命」です。貴社のご清祥をお祈り申し上げます。 コラム 叱り方 よかったらシェアしてね! URLをコピーしました! URLをコピーしました!