【部下育成の専門家が伝授】安易な褒め言葉を卒業!信頼を築く「認め方・叱り方」の原則6選 2025 10/14 コラム 叱り方 2025年10月14日 目次はじめに:その「頑張れ!」が、あなたの信頼を蝕んでいませんか? 経営者また幹部、管理職、リーダーのあなたは、毎日、会社のため、家族のため、そしてご自身のために、本当によく頑張っていらっしゃいます。その努力、私には痛いほどよくわかります。 そしてきっとあなたは、部下メンバーに対しても「良かれと思って」声をかけているはずです。「〇〇さん、よくやっているね!」「その調子だ、頑張れよ!」と。相手を励まし、褒めることで、良い人間関係を築こうとされているのでしょう。 しかし、もしその一生懸命な言葉が、実は相手の考える力を奪い、成長の芽を摘み、結果としてあなたから人を遠ざけているとしたら……? 「そんなはずはない」と思われるかもしれません。私自身もかつてはそうでした。人を褒めることは良いことに決まっていると信じて疑いませんでした。 しかし、26年間で12万人以上の方へ講演研修し、様々な業種の経営者、いろんな職種のリーダー、何万人ものビジネスパーソンと向き合う中で、痛いほど思い知らされたのです。上っ面だけの褒め言葉は、依存と甘えを助長させてしまうデメリットを生み出す危険があるのです。一瞬は気分が良いかもしれませんが、何の力にもなりません。 本当に人に慕われる人間、心の底から「この人についていきたい」と思われるリーダーは、人を安易に「褒め」たりはしません。その代わりに、もっと深く、もっと温かい方法で相手の魂を掴みます。それが、私が提唱する「認める」という行為です。 このブログ記事では、あなたの人間関係そのものを根っこから変える、人から自然と信頼される「人心掌握の言葉遣い」の原則を6つ、キュキュッと凝縮してお伝えします。これは単なる小手先のテクニックではありません。もしあなたが、部下や後輩から真に信頼されたいと願うなら、ぜひ最後まで、目と心で読み込んでくださいね。 第1の教え:「すごいね!」を封印し、「事実」を語る つい口にしてしまう言葉はありませんか?部下や後輩が何かを成し遂げたとき、反射的に「すごいな!」「さすがだね!」と。気持ちはわかります。便利ですし、場も和みますよね。 しかし、その一言が、実はあなたと相手の間に分厚い壁を作っているかもしれません。 「褒める」という行為には、無意識のうちに「私があなたを評価してあげる」という、上から下への目線が含まれます。評価する側とされる側。その時点で、関係は対等ではありません。そんな関係で、心の底から信頼されるでしょうか? 叱りの達人のわたくしが伝えている「認める」は全く違います。そこにあるのは、評価ではなく「観察」と「リスペクト(敬意)」です。 相手がやったこと、その「事実」そのものを深く見つめ、それを言葉にして伝える。ただそれだけです。 📌 実践の鍵:行動の「結果」でなく「プロセスと工夫」に焦点を当てる 部下が良い報告書を持ってきたら、「よくできたね、すごい!」で終わらせない。 事実を語る:「この報告書の3ページ目、競合のデータを円グラフでなく棒グラフで比較していますね。これだと、当社の強みが一目でわかります。この見せ方は素晴らしい。なぜこの形にしようと思ったのですか?」 人がついてこないのは、あなたに魅力がないからではありません。あなたの言葉が相手の心の表面を滑っていくだけで、深く突き刺さっていないからです。明日から、誰かの良いところを見つけたら、まず「何が」「どのように」良かったのかを具体的に観察し、その事実だけを相手に伝えてみてくださいね。 第2の教え:「大丈夫?」を捨て、「感情」を問う 人間関係は、常に順風満帆ではありません。時には、相手が失敗することもあります。そんな時、あなたはどんな言葉をかけるでしょうか? 多くの人が、「まあ、気にしないで」「誰にでもあることだよ」「次、頑張ればいい!」といった言葉をかけます。しかし、私に言わせれば、これらの言葉はすべて人の心を殺す毒薬です。 失敗して落ち込んでいる人間が、一番わかってほしいのは何だと思いますか?それは、「正論」でも「解決策」でもありません。その瞬間に渦巻いている、自分の「悔しい」「情けない」「申し訳ない」というドロドロした感情そのものなのです。 その感情にふたをして「気にするな」と言われたら、「この人は、私のこの苦しい気持ちをちっともわかってくれない」と、心のシャッターを閉ざしてしまうでしょう。 📌 実践の鍵:まずは感情に「名前」をつけさせる 部下が大きなミスをした時、責める前に原因を追及する前に、ただ目を見て静かに問いかけてください。 感情を問う:「……悔しいですか?」 「そうか。それほど本気で悔しがれるなら、あなたは大丈夫。その気持ちさえ忘れなければ、この失敗は必ず次への力になる」と、失敗から生まれた「悔しい」という名のエネルギーに火をつけ、次への推進力に変えてやることが一流のリーダーの仕事です。反射的に出てくる「大丈夫?」を飲み込み、まずは相手の心に寄り添い、感情を受け止めてくださいね。 第3の教え:「なんで?」を禁句にし、「どうしたら?」で未来を創る 人心掌握の真の主戦場つまり実践の場面は、日常の何気ない会話の中にあります。特に「質問」の仕方一つで、相手があなたを「信頼できるリーダー」と見るか、「ただの詰問官」と見るかが決まります。 部下や後輩に仕事の進捗を聞く際、思わしくない返事だったとき、つい「なんで、まだ終わっていないんだ?」「なんで、そんなやり方をした?」と口にしていませんか? 「なんで?」という言葉は、人を追い詰め、心を閉ざさせる「呪いの言葉」 「なんで?」は本質的に「過去」を向いており、相手の失敗や落ち度を責め立てる槍になります。責められた人間は、嘘をつくか、言い訳をするか、黙り込むかしか選びません。 📌 実践の鍵:「過去への追及」から「未来への相談」へ切り替える 社員や部下メンバーが思うような成果を出せなかった時、「なんで?」とは絶対に聞かない。 未来を創る質問「そうか、今は難しい状況ですね。では、あなた自身、この状況を良くするために“どうしたら”良いと思いますか?私に手伝えることはありますか?一緒に考えましょう。」 「どうしたら?」という言葉は魔法です。矛先は相手の失敗ではなく、「これからどうするか」という未来の解決策に向かいます。そして何より「一緒に考えよう」という姿勢が伝わった時、相手は初めて心を開き、本当の問題点や、自分でも気づいていなかったアイデアを話し始めてくれるのです。 第4の教え:命令を、「本人のストーリー」に替える 人の魂を奮い立たせる真のリーダーは、相手に「仕事をさせる」のではなく、「物語の主人公にする」言葉遣いをします。 人は、指示命令だけでは動かない。(他責思考の助長)人は、ストーリーを想像したときにはじめて、我が事に感じ動き出す。(自責思考が芽生える) 人間は、「やらされている」と感じた瞬間に能力が半減するようにできています。逆に「これは自分の仕事だ」「自分の使命だ」と感じた時には、普段では考えられないような力を発揮します。 多くの管理職が犯す間違いは、仕事をただの「タスク」として部下に割り振ってしまうことです。「〇〇さん、この資料を金曜までに作ってくれ」では、相手は言われた通りにやるだけのロボットになります。 📌 実践の鍵:仕事の「意味」と「Why you? (なぜ君が) 」を熱く語る 部下に何かを頼む時、必ずその仕事が持つ「意味」と、それをやる「あなた」との繋がりをストーリー(物語)にして語る。 ストーリー(物語)を語る「この資料作成は、ただのデータ集めではありません。来週の役員会議で、わが社の未来を決める羅針盤になる大事な仕事です。 なぜあなたに託すかというと、君のあの細やかな分析力と、物事を俯瞰する視点が、どうしても必要なのです。」 三流は仕事を「作業」として与え、二流は仕事に「目標」を与えます。そして、一流は、仕事に「ストーリー(物語)」を与えるのです。あなたの言葉一つで、部下の仕事は色褪せた退屈な作業にもなれば、血湧き肉躍る冒険にもなるのです。 第5の教え:人の価値は「いない場所」で決まる。「陰褒め」こそ最強の武器 あなたの「本当の器」が試されるのは、感謝の示し方、特に「本人がいない場所での振る舞い」です。 同僚や部下メンバーがいる前では、誰もが良い格好をします。しかし、その人がいない飲み会の席や休憩室の隅で、どんな話をしていますか?つい、愚痴や批判が口をついて出ていませんか? 人の真価は、本人がいる前で何を言うかではありません。本人がいない、陰の場所で、何を語るかで決まります。 人づてに聞く悪口は毒矢のように心に突き刺さりますが、人づてに聞く褒め言葉は、どんな高価な贈り物よりも人の心を打ちます。「あの人は、私たちがいないところでも、ちゃんと見ててくれている!」という、お金では絶対に買えない本物の信頼が生まれるのです。 📌 実践の鍵:陰口が出そうになったら、その人の「誠実さ」を語る 誰かがいない場所でその人の話題が出た時、愚痴や批判の流れに乗りそうになったら、ぐっとこらえる。 陰褒め「〇〇さんは不器用なところもあるけれど、あの仕事に対する誠実さには、私はいつも助けられています。見習わなければいけないと思っています。」 陰で人を褒めて失うものは何一つありません。むしろ、あなたのその一言が、巡り巡ってチーム全体の信頼関係を育み、最終的にはあなた自身の評価を盤石なものにしてくれるのです。 第6の教え:叱る時は「一対一」、認める時は「みんなの前」でやる これまで話してきた五つの教えを、すべて束ねる土台となるのがこの原則です。 私が今まで見てきた管理職の実に8割以上が、この原則を逆にやってしまっています。みんなの前で部下を公開処刑のように叱りつけ、褒める時は個室に呼んでこっそり褒める。これは最悪の行為です。 📌 実践の鍵:プライドは守り、成功体験は共有する 叱る時:一対一の部屋で 相手のプライドを守るため、決して人前では行いません。「ここだけの話ですが」と前置きし、静かに、しかし厳しく、何がいけなかったのかを伝えます。最後に必ず「私はあなたに期待しているからこそ敢えて厳しいことを言った。この話は終わり。明日からまた頼む」と希望の言葉で締めくくります。 認める時:みんなが集まる公の場で 朝礼や会議など、人が集まっている場所で、大声でその功績を称えます。そして、第1の教えのように、「具体的に何が、どのように素晴らしかったのか」をみんなの前で語ります。 こうすることで、褒められた本人は最高の栄誉を感じ、周りの人間は「なるほど、ああいう工夫をすれば評価されるのだ」と学ぶことができるのです。良い仕事の基準が、組織の文化として根付いていきます。 終わりに:言葉は、あなたの心を映す鏡です 今日お伝えした6つの教えは、結局のところ、小手先のテクニックではありません。その根っこにあるのは、「あなたは、目の前のその人を、心から一人の尊い人間として尊重しているか?」という、たった一つのシンプルな問いです。 言葉は、あなたの心を映す鏡です。あなたが相手を「かけがえのないパートナー」だと思っていれば、自然と温かい、相手を認め、活かす言葉が出てきます。 上っ面の言葉で築いた関係は、嵐が来たら一瞬で吹き飛んでしまいます。しかし、心からの「認め」の言葉で築いた信頼は、どんな困難が来ても揺るぐことのない、一生ものの財産になります。 明日から、いや、このブログ記事を読み終えた瞬間から、一つだけで構いません。ここでお伝えした内容の中から一つ選んで実践してみてください。その小さな一歩が、あなたの周りの世界を、驚くほど温かい、信頼に満ちたものに変えていくはずです。 コラム 叱り方 よかったらシェアしてね! URLをコピーしました! URLをコピーしました!