指示と違う資料を作ってきた部下への正しい指導法|やる気を潰さず軌道修正する声かけ台本【ケーススタディ】

「頼んだ内容と違うのに満足げに報告してきた…」そんな部下にどう向き合うべき?叱りの達人が、部下の意欲を削がずに軌道修正させる「リスペクト・フィードバック®」の実践トークスクリプトを公開。意図を認めて行動を改善する4ステップを、叱りの達人協会 代表の河村晴美氏による会話例付きで徹底解説!

指示した内容とまったく違う資料を作ってきた部下が、「よかれと思って海外トレンドもまとめておきました!」と満足げに報告してきたら……あなたならどう声をかけますか?

「いや、頼んだのこれじゃないんだけど!」と怒鳴りたくなる気持ちをグッとこらえ、部下のやる気を潰さずに軌道修正させる「リスペクト・フィードバック」の実践トークスクリプトをご紹介します。

目次

【実践ケーススタディ】頼んだものと違う資料を「ドヤ顔」で出してきた部下、どう指導する?

  • 上司の指示:
    「今日の夕方までに、競合3社の基本料金プランをエクセル一覧表にまとめてほしい」
  • 部下(佐藤さん)の提出物:
    依頼した料金比較表は未完成。
    代わりに、頼んでもいない「Webデザイン分析」や「海外の最新トレンド事例」をまとめた気合十分のPowerPointスライド10枚。
  • 部下の言い分:
    「業界の最新動向も絶対に知っておくべきだと思って、頑張って調べました!」
    (悪気ゼロ・むしろ褒めてもらえると期待している状態)

やってはいけないNG対応(単なるダメ出し)

上司:

「は? 何これ。頼んだ料金表はどこ行ったの? 勝手なことやってないで、言われたことだけやってよ。今日夕方までって言ったよね? 本当にピントがずれてるし、やる気あるの?」

ここがNG!

思考停止と反発を生む:
頭ごなしに全否定されると、部下は「せっかく良かれと思って工夫したのに、この上司は何もわかってくれない」と反発するか、「もう二度と自発的に考えるのはやめて、言われたことだけやろう(指示待ち化)」になります。

「やる気」という曖昧な言葉:
成果の管理ではなく感情のぶつけ合いになり、指導としての機能がゼロです。

【実践台本】リスペクト・フィードバック 4ステップ

部下の「肯定的な意図」を受け止めつつ、必要な軌道修正を最短で完了させる対話ステップです。

ステップ1:意図の引き出しと承認(意図=OK)

上司:

「佐藤さん、まずは時間通りに資料をまとめて提出してくれてありがとう。

ひとつ聞かせてほしいんだけど、今回、基本の料金プラン表に加えてこの海外トレンドの資料を作ろうと思ったのは、どういう意図や思いがあったからなのかな?」

部下(佐藤さん):

「はい、料金の比較だけだと他社との差別化が見えにくいと思いまして……。海外の最新トレンドも押さえておいた方が、今後の提案で絶対に強みになると思ってまとめました!」

上司:

「なるほど、『先々の提案で差別化できるように、広い視野を持っておこう』と考えて動いてくれたんだね。その情報収集への意欲や、提案の質を高めようという問題意識は素晴らしいと思うよ。」

【解説のポイント】

まずは問いかけて、本人の「良かれと思った理由」を言わせます。
どんな的外れな行動の裏にも「本人の肯定的な意図」があります。
そこを一度「そうか、そういう思いがあったんだね」と受け止めるだけで、部下の警戒心は解け、アドバイスを聞く体制が整います。

ステップ2:行動と事実の切り離し(行動=アウト)

上司:

「その積極性はすごく頼もしい。その上で、今回の『仕事の進め方』については軌道修正が必要なんだ。

今回、最優先で必要だったのは『今日中に結論を出すための国内競合3社の料金プラン』だったよね。佐藤さんが作ってくれたこの海外事例はすごく興味深いけれど、今日の会議で使うべき基本料金の比較が入っていないんだ。」

【解説のポイント】

「あなたの意欲(人格・意図)は素晴らしい。しかし、取った行動(進め方)はゴールとずれていた」と、意図と行動を明確に切り離して伝えます。
人格を否定しないため、部下も素直に「あ、進め方を間違えたんだ」と事実を受け入れられます。

ステップ3:理由(Why)の共有と、成果物の活用

上司:

「なぜ今日、近隣3社の料金表が必要だったかというとね。今まさに現場でお客様から『他社と比べてどうなの?』と聞かれていて、明日からの営業方針を決めるための緊急の数字だったからなんだ。

目的が共有できていなくて申し訳なかったね。ただ、佐藤さんが作ってくれたこの海外トレンドの10枚も、決して無駄にはしないよ。 次の企画会議で『今後の市場動向』としてチーム全員に共有したいから、そこでぜひ使わせてほしい。」

【解説のポイント】
人は「何をするか(What)」だけだとミスをしますが、「なぜそれが必要なのか(Why)」が腹落ちすると、次回から先回りして動けるようになります。
また、せっかく作った資料を「無駄にせず、別の機会で活かす」と伝えることで、部下の努力を無駄死にさせず、自己肯定感を守ります。

ステップ4:ポテンシャルの喚起と、リカバリー行動の着手

上司:

「佐藤さんはリサーチ力も高いし、資料をまとめるスピードもある。だからこそ、本来の目的とピントがガチッと合ったら、もっとものすごい成果を出せるはずだよ。

だから、ここからのリカバリーに期待したい。まずは大至急、競合3社の料金一覧をエクセルでまとめ直してほしいんだけど、何分くらいで着手できそうかな?」

部下(佐藤さん):

「わかりました! 目的がよく分かりました。すぐ取りかかって、1時間以内に仕上げます!」

上司:

「よし、頼むね。途中で数字の集め方に迷ったら、勝手に抱え込まずに途中で一声かけてね。期待してるよ!」

【解説のポイント】

最後は「あなたならできる」という期待とリスペクトを伝えて面談を締めます。
厳しい要求や手戻りを指示されているはずなのに、部下の心には「よし、挽回して期待に応えよう!」というエネルギーが残ります。

まとめ

部下の勝手なスタンドプレーやミスに直面したとき、上司に求められるのは「感情の爆発」ではなく「対話の構造設計」です。

・意図を引き出して受け止める(意図はOK)
・目的とのズレを事実ベースで指摘する(行動はアウト)
・なぜ必要だったのか(Why)を教える
・能力を信じて次の一歩を踏み出させる

このステップを踏むだけで、部下は「怒られた」という嫌な感情を引きずることなく、自ら学習し、成長のサイクルへと入っていきます。ぜひ現場でお試しください!

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