「傾聴疲れ」で体調を崩す前に。心理学が教える「優しいリーダー」が他人の愚痴から身を守る方法

「傾聴疲れ」で体調を崩す前に。心理学が教える「優しいリーダー」が他人の愚痴から身を守る方法について、パワハラ予防の専門家であり、NHKクローズアップ現代にも出演した、叱りの達人河村晴美氏による解説です。
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もしかしたら、あなたは自分を後回しにしているかもしれない

こんにちは、河村晴美です。

最近の部下育成やメンタルヘルス研修では、猫も杓子も「傾聴力」の大切さをこれでもかと叫んでいます。
「まずは相手の話を否定せずに聞きなさい」

――確かに、組織のコミュニケーションにおいて聞く姿勢は基本中の基本です。

何を隠そう、私も27年前、産業カウンセラーの資格取得からこの世界に足を踏み入れました。
カール・ロジャーズの「来談者中心療法」に基づく傾聴、承認、共感の重要性は、30年前から、それこそ血肉となるまで叩き込まれてきました。

ですから、傾聴の価値は誰よりも知っているつもりです。
しかし、現在のビジネス現場を見ていて、私は強い危機感を抱かずにはいられません。

「ただ優しく聞くだけで、本当に現場が回ると思っているのですか?」と。

聞くだけで、日々勃発している現場の問題は解決するのか?

「優しい人」ほど潰される、現場の残酷なリアル

実は今、日常の中で「傾聴疲れ」を起こし、心身のバランスを崩してしまう心優しいリーダーや管理職があふれています。

相手の話を「うん、うん」と遮らずに聞いてあげるばかりで、自分の主張を後回しにしてしまう人。
そんなあなたの周りには、今どんな人が集まっているでしょうか?

堰を切ったかのように、不平不満、他人の愚痴、マウンティング交じりの自慢話を、これ幸いと流し込んでくる人が集まってはいませんか?

エネルギーを奪う側(エナジードレイン)は、自分の胸の内をすべて吐き出して「あぁ、すっきりした!ありがとうございます!」と笑顔で帰っていきます。
しかし、残されたあなたはどうでしょう。
どっと押し寄せるネガティブな感情のゴミをまともに受け止め、どじっと疲弊し、最悪の場合は体調まで崩してしまうのです。

これでは、リーダーの時間と体力と思考力は、いくつあっても足りませんよね?

あなたの親切心(傾聴)が、あなた自身を消耗させていませんか?

「友達が悪いんじゃない、あなたが自らそれを選んでいるの!」

私の大切な知人も、まさにこの罠にドップリとハマり、原因不明の循環器系の不調に悩まされていました。
彼女の異変に気づいた私は、愛を込めて、ド直球の一喝を入れました。

友人へ、あえて厳しい一言

いい加減にしなさい。あなたが好んで他人の不幸まで背負い込み、自分を後回しにしているんだよ。
あなたの友達が悪いんじゃない。
あなたが自ら、その『犠牲者のポジション』を選び続けているの。
それで本当にあなたの人生は幸せなの!?

彼女はハッと目を見開いていました。
人間関係のストレスの多くは、実はこうした「おせっかいな独り相撲」から生まれます。

人生をどう歩むか、何を大切にするかは、正義や優劣ではありません。

すべてはその人の「好み」の問題です。
出世したい人も、プライベートを重視したい人も、社会貢献したい人も、目の前のお金を稼ぎたい人も、ただの好みの違い。

「みんな違って、みんな好みが違うだけ」

そう腹の底からガツンと納得できたとき、私は他人に自分の正論を押し付けるのをやめました。そして、本当の意味で相手を「一人の独立した人間」としてリスペクトできるようになったのです。

あなたは自分を大切にするよりも、他者を優先していませんか?

心理学が証明する、あなたに足りない「境界線」

なぜ、優しい人ほど他人のネガティブに侵食されてしまうのか。
心理学では、自分と他人の感情の間に引くべき明確なラインを「心理的境界線(バウンダリー)」と呼びます。

傾聴疲れを起こす人は、この境界線がサランラップよりも薄くなっています。

だから相手のどす黒い感情が、自分の心のテリトリーへ簡単に侵入してきてしまうのです。
人間関係を壊したくないあまり、何かあるとすぐに「ごめんね」と言ってしまう人も同様です。

先に自分で責任を背負い込んでしまう、悪癖がついています。

ですが、あえて厳しいことを言わせてください。

自分自身を大切に扱えない人間が、本当の意味で他人を大切にできるわけがありません。

相手の都合に100%合わせることだけが、優しさではないのです。

明日から、あなたの手札を変えなさい

では、明日からどうするか。 答えはシンプルです。

「愚痴やネガティブな泥沼話が始まりそうになったら、相手を傷つけずにスッと物理的・時間的距離を取る選択をする」

これだけです。
何も正面から戦う必要はありません。
私たち大人には、相手の自尊心を傷つけずに身を守る「賢い手札」が無数にあります。

例えば
・「ごめん!これから外せない会議(用事)があって!」と言葉を濁して立ち去る
・LINEのネガティブな連投は、既読をつけずに一回後回しにする
・そもそも、相手の接触に反応するかどうか?反射的に反応せず、一呼吸して冷静に考えてみる

冷たいと思われるかも、と不安になる必要はありません。
「私は私の機嫌を最優先にする」と、まずはあなたが決めることです。

あなたの心は、他人の愚痴を捨てるゴミ箱ではありません。
今日から心のシャッターを適切に閉める勇気を持って、あなたの貴重なエネルギーを、本当に大切な仕事と人生に使っていきましょう。

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